Friday 9 March 2012

カウンセリングに行くなんて…

カウンセリングやセラピーは日本人にはなじみが薄く、カウンセリングと言うと精神病を病んでいるひとが受ける治療、という印象が大きいのかもしれません。
私は、カウンセラー+サンドプレーセラピストですから、クライアンツに診断を下すわけではありません。セッションを続ける中での観察で、クライアントが精神的に大変難しい状態であると感じた時にはサイコロジスト・サイキアトリストに行って頂くよう紹介します。
知らない人に悩み事を話すなんて...という方もいらっしゃいます。距離を置いた人だからこそ家族・友人に伝わる心配なく、どう思われるかとつくろうことなく、起こっている出来事をありのまま正直な気持ちをそのまま話せるのです。カウンセリングが普及しているアメリカでは、“フラストレーション溜まっているからカウンセラーに会ってくる” とういう具合らしいです。また、子どもにとってもカウンセラー/セラピストは、お母さんとも先生とも何か違って安心して心を開ける人であるはずです。
悲しみ、心の痛み、怒りや人生に行き詰まりを感じ辛さを抱えているとしたら、それが大きくなり過ぎて治療や薬がいるようになる前にカウンセリングに足を運んではいかがですか?


Thursday 23 February 2012

サンドプレーセラピー with 大人のクライアント

カウンセリングはカウンセラーがクライアントとの会話を通して状況や気もちを探索していきます。言語を通して理解・認識しようとする方法です。

砂・水・ミニチュアを使って象徴的に気もちや状況を表現するのがサンドプレーです。セラピストは作り出されたトレーを基に会話を展開します。

私たちは、感情を無意識のうちに隠すことがあります。意識していない事を言語によって対処しようとすることは不可能だということ事は簡単に理解していただけるでしょう。
ところが、隠して忘れてはいても、事実はまだ無意識ながら存在していて現在の行動に影響していることがあるのです。自然に触れることは、処理できていなかった感情に向き合うことのきっかけになります。

これは子どもだけに使われる療法ではありません。カウンセリングとの併用もしくは代替えとして大人にも有効です。JCSのインタビューで子どものクライアンツに焦点を当てた紹介をしていただきました。
文中にコメントしていただいた通り、このセラピーは子どもだけを対象としたものではありません。
しばらく前にこのブログでも大人のクライアンツからの感想などを載せましたが、大人に焦点を当てて書いてみようと思います。

 大人の多くは人生のストーリーをミニチュアを使って表現することから始めます。子どもの方が象徴的な表現をし大人の方が現実的な表現から始めるのは、私たちは教育の中で頭を使って理解するトレーニングを積み重ねてきたからでしょうか。
顔を見て話すカウンセリングと違って創り出されたものを基に会話が展開しますから、話しやすいと感じる方が多いです。第3者的に見れるのも一つの理由でしょう。

  厳しい家庭で育った女性が年老いた母親と一緒に住む難しさを訴えていました。彼女は小さい女の子を自分として選び、鳥かごの中に入れようとずいぶん努力していましたが大きさが合わず結局は自分を籠の後ろに置きました。後で話を聞いてみると、かごに収まらなくて良かった。籠の中にはいたくないと思ったし、現実は私は結婚し自分の生き方があり、もうかごの中にはいないと気づいた。とおっしゃいました。

  時間をかけて自分と娘の人生を表現していた女性に、時間が迫り“あと10分ですよ”声をかけた。途中で終わらせたような形だったが、これは私の人生を現わしているという。娘の部分に時間をかけて滑らかに仕上げ、自分の部分にかける時間がなくなった。娘が幸せなら私は幸せ、とできる限りを尽くして育ててきたのに娘はなぜか反抗的・挑戦的でうまくいかない。自分が幸せなら子どももそれを感じて幸せ、とは考えられなかった彼女が今は自分の気もちに正直に行動してもいいと言う事を受け入れられるようになってきた。
心の底からの変化を生みだす魅力がこのセラピーにはあります。

  遊び、自由表現などと聞くと抵抗を感じる大人は多いかもしれません。
“忙しさの中で遊び心を忘れていました。この経験(遊び)は私を子どもの時のように素直になる助けになったように思います。”と感想をくださった方がいます。

座談会 - サンドプレーセラピー for 子どもたち 2

質問者:何回くらい通ったら効果が出てくるんでしょうか?

中沢:ケースによって違います。でも、確実に言える事は残念ながら、1回で効くものではありません。何でも“早く・今すぐに” というテンポが求められているこの頃、時間がかかることは受け入れられにくいですが、一寸考えてみてください。指を切ったとします。傷口がふさがるまでにどれくらいかかりますか?皮膚の炎症が出た、カイロプラクターに行く等のケースが1回で完治ってあり得ますか?体の痛みを治すのに時間がかかるのは理解されても、なぜか心の痛みとなると受け入れられないんですね。触ろうともしないことすらありませんか。

質問者:本当にそうですね。


中沢:大人のクライアントの場合は、本人が決めてセラピーにいらっしゃいますが、子どもの場合は大概大人が必要性を感じて連れてくるのですから、少し大きい子どもたちは抵抗・反抗心があることもあります。前に述べた信頼関係を築くのに時間がいる子どももいます。
また、不安定な家庭環境にいる子どもたちの場合落ち着いてきたなぁと思ったのに次に週のセションでは何があったんだろうと思わせるような遊びぶりを見せる、そんなこともあります。
始めは週1回、それが2週間おき、3週間おきといった具合になります。“…回で良くなります” とお答えできないので聞いた側にしたらかゆい所に手が届かないといった返答ですね。

質問者:一つの家庭で起こっている事は他の兄弟だって同じように経験しているんですよね。一人だけが気がかりな行動を示すんでしょうか。

中沢:どう思いますか?例をお話します。私のクライアントのケースではありません。
家庭内暴力の被害者の母子に接することがありました。お母さんは被害者といってもひ弱な感じなどない方でした。長女とはぶつかることが多く大声をあげているのをよく聞きました。長女の子は父親を殺したいくらい憎んでいる、母親も同じくらい嫌いだと言うのです。でも彼女がとってきた行動は、事が荒立つたびに父親に立ち向かい母親を助けてきた(守った?)らしいのです。
私が“今度カウンセラーにある時にどんな気もちでも正直に話していいんだよ。”という説明をしていると、妹が“私はカウンセラーっていう人がいないから誰にも話せない。”というんです。

質問者::性格の違いが見えますね。

中沢:親のいざこざがあった時の二人の立場、受けた影響等いろいろ違うでしょう。でもどちらも傷ついているんですね。

座談会 - サンドプレーセラピー for 子どもたち 1

質問者 今日はサンドプレー・セラピーに興味があるけれどいろいろ知らない事がある方が多いと思うので代弁して質問をしたいと思っているんですが。

中沢 なるべくわかり易くお答えしたいと思っています。

質問者 まず、このセラピーは子どものためだけのものではないと読んだんですが。

中沢 そうです。大人のクライアンツも多いです。
子どもと大人とではセラピーの展開が違います。
大人の場合は、まず自分で20分~30分静かに作業してもらってから話すんですが、子どもには話すな、とは言えませんから。

質問者 そうですね。
“砂遊び”の印象が強くて大人にも??と思ってしまいますが。

中沢 忘れてしまった遊び心に触れたことで、“私”に再会した、といったコメントをしたクライアントがいます。
初めてサンドプレーの体験ワークショップに参加した時に、印象に残った人がいます。彼女は自分がカウンセリングなどの助けが必要な状況にあるのをよく承知していて、それでも抵抗があって、“誘ってくれた友達の顔を立てるために来ました。第3者的に見学させてもらうつもりです”と自己紹介したんです。ところがその彼女が一番楽しんで帰って行ったんです。
忙しい生活の中で静かに自分と向き合ってみる時間が無い大人が多いでしょう。そんなシンプルな事が大事な一歩で、それをもとにセラピー的な展開をしていくんです。

質問者 もっと聞きたいですが、今日は子ども対象のセラピーに絞ってお話しを聞くという事で良いですか?

中沢 私は、子ども対象にセラピーをする時には、サンドプレーとう手段にChild Centred Play Therapy の理論を加えて行っています。
子どもの言語的な発達、問題処理をしていく子どもの心のメカニズムを考慮したうえで、子どもが心に詰まらせているものを開放する歩みを支えていくんです。

質問者 恥ずかしいような質問ですが、セラピーの時間中は何をするんですか?
何かテーマを与えて砂遊びをするんですか?

中沢 45分間、純粋に子どもに主導権がある時間です。遊びたければ遊ぶ、何もしたくなければ何もしない、砂じゃなくて床におもちゃを並べて遊びたければそれでも良いんです。もちろんルールがあるんですよ。おもちゃは遊ぶもので投げるものではないとか、もっと遊びたくても時間が来たら終わりにするとか。

質問者 遊ばない子もいるんですか?

中沢 いますよ。
特に初めのうちは、何でこんな所に来なきゃいけないんだとか、知らない人と何して良いかわからないとか、子どもなりの理由で何もしない・何も言わない事は起こります。
信頼関係を築くのが第一関門。

質問者 家や幼稚園で遊ぶのと何が違うんですか?

中沢 子どもたちは大概の事(嫌だった事、痛かったこと、悔しかったこと、悲しかったこと)は毎日の遊びの中で清算していきます。
たとえば、青い車で遊びたかったのに友達が貸してくれなかったとか、もっとお菓子が欲しかったのにお母さんはくれなかったとか、日常茶飯事のことは遊んでいるうちに無意識のうちに“もう、いいや”という事に収まっていく。ところがそれでは処理しきれない出来事が起こるとセラピーという助けが必要になってくるんです。

質問者 トラウマとかいった経験ですか?

中沢 子どもは大人が思いもよらない所でいろんな感情をため込んでしまう事があります。
大人の目からは何も起こっていないようでも子どもにしたら大変な出来事だったとうことがあるんです。受け止め方が違ったり、理解力がまだ育っていなかったり理由は色々です。
結果として行動に現れてくるんです。

質問者 セラピーの中で明らかになったことを親と話し合って改善していくんですか?

中沢 カウンセリングやセラピーを行う時には必ず守秘義務の説明をします。
セッションの内容を他に話さない義務です。例外は、裁判所からの要請、本人・他人の命にかかわる心配がある時、クライアントの許可を得た。
クライアントが3歳でも同じ立場です。
親と話す時には、具体的に子どもが何を言った何をして遊んだという事は話しませんが、遊びの中でどんな変化が起こっているかを観察に基づいて報告します。
親子一緒、兄弟一緒にセッションをするやり方があります。子どもも親も自分で表現しあってもらうやり方です。